中核地域生活支援センター「がじゅまる」

最近では、幼児期の「愛着形成」、そして10代までの親とのかかわりが幸せに生きるために重要であるといわれています。


神戸大学人間発達環境研究科教授 鳥居深雪さんの

乳幼児期における愛着(養育者との間に形成される情緒的なきずな)や「この世界は信頼できる」という基本的信頼感の獲得は、対人間関係の基本として人間が社会のなかで生きる「根っこ」ともいえる。そして、情緒(気持)は「幹」に、認知(考え)は「枝」に、行動は「葉」に例えられ、根っこがしっかりすると幹である情動も安定する。根っこと幹がしっかりしていなければ、行動も不安定になる。


という研究報告もあります。

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相次ぐ子どもへの虐待のニュースに、胸を痛めている人も多いと思います。事件の背景にはどのようなことがあるのでしょうか?孤立化した世の中で、誰に相談したらいいのか悩む人も多いと考えられます。


ところで


千葉県の中核地域生活支援事業ってご存知でしょうか?


千葉県では、子ども、障害者、高齢者等誰もが、ありのままにその人らしく、地域で暮らすことができる地域社会を実現するために、多様な相談に対して、24時間365日体制で総合的な対応を行う地域福祉のセーフティネットとして、各地域に、中核地域生活支援センターを設置し、広域的、高度な専門性をもった寄り添い支援を行っています。


「がじゅまる」は、千葉県からの委託を受け、その人その人に合わせた生活を支援するネットワークづくりのお手伝いをしています。(市川市・浦安市にお住まいの方対象/無料)



そこで今回は「がじゅまる」のセンター長の朝比奈さん、副センター長の宮本さん、スタッフの清水さん、研修生の今井さんにお話を伺いました。


生きづらさの背景には、どのようなことが隠されているのでしょうか?


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--------  どのような相談が多いのでしょうか?

朝比奈さん:お子さんからお年寄りまで年齢を問わず、それから障害のある方ない方、ご病気の方、健康な方、それぞれから様々なご相談が寄せられています。例えばお仕事で悩んでいたりだとか、お仕事が見つからないとか、お金に困っているとか、それから家族の中でなかなかうまくいかないことがあって悩んでいるとか、学校のこととか、場合によっては遊びに行く先でトラブルに巻き込まれてとか、本当に様々な相談です。


--------  相談の背景は、例えばどんなものがあると思いますか?


朝比奈さん:年齢を問わず小さいお子さんから、50代、60代、場合によってはもっとお年寄りの方までご相談を受けているんですけれども、私がすごく感じるのは、どんな風に小さい時、子どもの頃を過ごしてきたのかな?というのが気になるところです。

例えば私たち、お金困るというのが一番切実だと思うんですけれども、中にはお金のことよりも小さいときに、お母さんからひどいことを言われたとか、それから学校でいじめられたとか、そんな傷ついた経験の方を切々とお話される方もいらっしゃって、やっぱり小さい時にいろんな大人の人たちに、目をかけてもらう、親御さんだけじゃなくて、そういうところは重要だし、それがなかなか得られなかった方は辛い気持をずっと抱き続けているんだなと感じています。


宮本さん:子どもの頃、障害を持たれていて、障害するときの判断を受けずにずっと生活されていて社会的につまづいたり、生きづらさを抱えながら生活されている方もいます。成人になってから、私たちのシステムに入って「障害というところでいろいろなサポートを受けられるんだ」と気づき、これから生活を豊かにしていく……。もっと早めにここにかかわることができればよかったんですけれども、なかなか家族が受け入れなかったりする方々も多く、難しさを感じています。


朝比奈さん:親御さん自身も障害や病気のようなものを抱えていて、現実ではなかなか子育てをする余裕がなかったり、誰にも助けてもらえなくて孤立した状況の中で親子間のやりとりが生じてしまうこともあります。親御さん自身も一方的に責められないですし、支える環境を作っていくことが重要なんじゃないかと思います。


清水さん:学校からお子さんが昼食を持ってこないというお話があって、こちらのほうからどういう状況なのかと学校を通して入らせていただいて蓋を開けてみると、確かに生活がままならない状態でした。これは生活保護につなぐしかないかなとか、そういったことを拾い上げながら関わっているんですけれども、やはり先ほど宮本の方から話があったように障害がどこかにあって、学校に行っているお子さんだけじゃなくてご家族全体の問題であったりとかいうことがあります。


--------  これから目指すべき地域社会とはどのようなものでしょうか


朝比奈さん:いろいろな人から相談を受けていると、例えば家族はこうあるべきとかひとくくりにはできないなって思っています。

ただ、いろんな人たちがいるということを理解できるといいなと思っています。やっぱり自分と違うとか、自分達と違うとか、ちょっと変わっているとかそういうことは、排除とかいじめの対象になるとかそんなことが少しでもなくなる社会になるといいなと思っています。


宮本さん:障害のあるなし関係なく、家族だけではなくて近隣の方とかいろいろなところが気にかけてもらったり、逆に話に行けるようなところっていうか、どこでも相談ができるという風な窓口があったり、ちょっとしたことでも話ができるというふうなところが、これからはあるべきものなのかな、そういう風な社会があったほうがいいのかなと。

そのとっかかりとしてではないですけど、がじゅまるとしては総合的な相談という形でもありますし、私たちとしては窓口だけじゃなくて一緒になって寄り添いながら仕事をさせていただいているので、一緒に悩みを共感できるような社会があったほうがいいのかなと。


朝比奈さん:だんだん皆さん年齢が上がってくるので、問題がまた変わってくるというのが成長過程であります。最初出逢った時には中学生くらいだったのが、高校はどうするという進学の問題であったり、高校卒業したら就職できるのか、そこも就職の前段階と言いますかその方にあった場所を見つけることができるのかとか、少しずつ形を変えて寄り添っていかなくてはいけないパターンがたくさんあるので、そこも見据えていきたいなと考えています。


実習生今井さん:がじゅまるでは、いろいろな複雑な問題を抱えた方とかが、問題が連鎖して家族の中でどうしようもならなくなっているという方が相談にこられます。

そういう方々に寄り添って、一緒にそれぞれの人生にこれまで必要だけれどもうまくいっていなかったことだとか、大事なことを一緒に考えてやり直しをしているなと。

しかも一緒に考えているというか悩んでいるというか、そこががじゅまるの特徴だと思っているんですけれども、そういったなかで、絡んでいた問題が少しづつほぐれていくのを目の当たりにして、寄り添うのって大変だけれども、支援者の方もだんだん変化していくし、それが面白いなと思って実習に入っています。


--------  これから目指すべき社会のためにがじゅまるが取り組みたい事はどのようなことでしょうか


朝比奈さん:がじゅまるは平成16年の10月にスタートして、もう14年、15年目に入ろうとしているところなんですけれども、いろんな方々と出会って、私たちが暮らすこの地域をどんな地域にしていくかとかしていきたいかとか、いろいろ考えながら動いてきました。


様々な相談しにくる方に出逢いましたけれども、その人たちを支える輪っかっていうか例えば学校の先生であったりだとか、それから不動産屋さんで物件を紹介してくださる方、銀行の窓口で手続きを手伝ってくださる方、お買い物に行ったときにレジで受けとりする方、警察の方、自治会の方、さまざまな方に出逢って、役割が違っても、みなさんなんとかこの人たちを支えようとか、自分にできることをしようという想いを持っている方がすごくたくさんいるということもわかってきました。


なんとなく相談をしにくる人たちは助けられる人で、私たちは助ける人っていうあんまりそういう役割がはっきり分かれているのわけではないと思います。例えばいらなくなったものがあって「どなたか使ってくださる人がいればどうぞ使ってください」とおっしゃってくれたり、場合によっては「自分にできそうなことがあるかもしれない」という申し出があって一緒に活動してくださるような、そんなことがどんどん広がっていくようなしくみをつくれるといいなと思っています。


それから、私たちがすごく悩んでいるのは、10代後半20代の若い年代で、家族を頼れない人ですね。ご家族に病気や障害があったり、ご家族もぎりぎりの生活の中で例えば子どもさんたちが自立したいと思っていても、アパートの費用を捻出するだけの余裕がないとか、そんな人たちのことをなんとか支えていきたいと思っています。


やっぱり若い年代の人で家庭的な環境に恵まれなかった人は、なかなか大人のことを信頼という力が育まれていない。そして例えばSNSで知らない地域の知らない大人のところにポンと飛び込んでいって傷ついたりとか、風俗の方がお金になるからだとかそんなことで、どんどん危ないところ知らない場所を頼ってしまう。


そういう人達をつなぎとめるには、やっぱり30代、40代、50代の力では難しかったりするので、そういう意味では似たような課題を抱えた若い年代の人たちにサポーターになってもらいたいと思っているんですね。そんないろいろなつながりをつくっていきたいなと思っています。

がじゅまるでは一貫して「助言」「情報提供」ではなく「支援」に重きをおいてきました。それは、ノウハウの基盤が障害者支援であったからだといいます。


平成16年の開設当初は、障害のある人たち(疑いを含む)からの相談が7割でした。しかし、リーマンショック以降、生活困窮ニーズが増加し、平成27年からは生活困窮者支援へニーズが変わってきたそうです。


家庭の基盤が弱い、子ども・若者支援がこれからのテーマになってきます。


見えてきた課題は、地域社会全体で支えていくこと。私たちも無関係ではありません。さまざまなことを考えさせられました。


ほいく・未来ファクトリー

保育の未来を考える人がつながる場所づくりと情報の提供をしています。

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